膝蓋骨脱臼について

膝蓋骨脱臼とは膝のお皿が所定の位置から別の位置に移動してしまう事を言う。
脱臼の度合い(グレード)で4段階に分けられる。

グレード1 めったに脱臼はおこらないが、膝蓋骨を手で押すと脱臼する。
手を離すと元に戻る。
膝の屈伸に問題はない。
グレード2 時々「スキップ」(ビッコを示す)をする。
時々脱臼しているが、手で戻すと元に戻る。
大腿骨が少しねじれている。
グレード3 常に膝蓋骨は脱臼した位置にある。
手で元に戻す事が出来るが、すぐまた外れる。
頻繁にビッコを示す。
大腿骨にも脛骨(けいこつ)にも明らかな変形が見られる。
グレード4 常に膝蓋骨は脱臼した位置にある。
手で元に戻す事が出来ない。関節を伸ばす事も出来ない。
常にビッコを示している。
大腿骨・脛骨に80度位のネジレがある。


膝蓋骨は膝関節の上部前方中央に位置し、腰から「大腿骨ー膝関節ー脛骨」とズボンの折り目のように一直線上に並んでいる。
そして、足の屈伸に伴い、大腿骨の遠位端(えんいたん・・・ヒザ側)の滑車の溝にそって上下運動をし、太ももの筋肉の動きを下方に垂直方向の力として伝えている。
つまり、正常な膝蓋骨は上下に動き、内外に外れることはない。

軽度(グレード1〜2)では関節のゆるみはあるが、時々ビッコを引いても手で戻してやると普通に歩く。
習慣性になってくると後足をまっすぐに後方に伸ばして自分で戻したりする。
しかし、グレード3〜4になってくると膝蓋骨が膝関節の内側に常に位置する事になり、垂直方向の上の筋肉からの引っ張りが内側からの引っ張りとなる為、骨のネジレが起こってくる。
ひどくなってくると関節より上の太ももの筋肉(大腿四頭筋)のバランス異常・関節周辺のじん帯のゆるみ等も発生していて 手術しても再発する事がある。


*原因*
先天性と外傷性がある。
小型犬には先天性の内方脱臼が多く、その発生頻度も小型犬は大型犬の10倍以上、メスがオスの1、5倍多いと言われている。
遺伝的要因が高い病気。

膝蓋骨脱臼になりやすい犬
プードル・ポメラニアン・ヨークシャーテリア・柴犬など。
これらの犬種は胴づまりで腰が高く、側面からの立位姿が正方形に見える、いわゆる格好の良いタイプの犬。
膝蓋骨(内方)脱臼は小型犬が胴づまりという格好良さを求められる中で増えてきた病気である。


*治療方法*
治療の最大のポイントはいかに早く症状を発見できるかである。
目立った症状がないうちに発見できれば外科手術をせず 理学的な運動療法で 膝関節を支持する筋肉や靭帯を鍛える事で病気を克服できる場合もある。

症状が軽いうちに発見できれば 同じ外科治療でも比較的簡単な手術で脱臼を防ぐ事ができる。
脱臼が常態化しているのなら 整形手術を施さなければならない。

手術方法は15通り以上あり、グレードによっていくつかの手術方式を組み合わせたりする。
金属片をを打ち込み膝蓋骨を元の位置の滑車溝に固定させる方法(パラガード法)や、浅い滑車溝を削り取って新しい深い溝を作る方法などがある。

外科治療の場合、手術後1週間から十日して抜糸すれば退院して自宅治療となる。
退院後、1、2ヶ月間は自宅で安静状態を保ち、患部に負担が大きくかかる動き(ジャンプや急な回転など)をさせないよう 術後管理とリハビリをしっかりしなければならない。
膝蓋骨脱臼になりやすい犬は両方の膝関節とも発症する可能性が高く 両方行なう事が最善である。