4.アカラス

3月、菜々に最初の生理が訪れました。
その数日後、足の内側のつけねに黒い小さな木片の様なものが無数ついているのを見つけ、もしかしたらのみかもしれないと病院へ連れて行きました。
それは木屑の様なものだと分かりほっとしていたら 先生が背中に炎症の箇所があると言われてすぐに皮膚検査が行われました。
顕微鏡を覗かれていた若い先生が「アカラスありました」 えっそれ何?
院長先生がアカラスの事を本を取り出して説明してくれましたが ひどい症状の写真ばかりで青ざめてしまいました。

その日から1週間〜10日毎の注射、朝晩の抗生物質、3日おきの皮膚消毒が始まりました。
同時に 図書館やパソコンのインターネットもようやく使える様になっていたので調べてみると 完治に時間がかかる難しい病気とありました。
親の私が不安そうな顔をしてはいけないと思うのですが 菜々は見抜いていた様です。

辛い1ヶ月でした。特に 消毒の時はたまりませんでした。
小さな小瓶にはいった消毒液を500mlのぬるま湯で薄めて コットン等に染み込ませ 口や目、耳、パット、陰部以外をべちゃべちゃになる迄塗っていきます。
菜々は私に抱っこされてはじめはおとなしくしていますが 身体が燃え出すのかすぐに手足をばたばたし始めます。
必死に押さえて塗布した後は自然乾燥です。
菜々は終った後 部屋中を駆け回り、床に頬や体をこすりつけます。
この繰り返しが3日毎でした。
菜々が病院嫌いになったのはこの頃です。
あれだけ優しい看護婦さんに愛想をふりまいてたのに。。。車が病院の方向へ向かうとワンワン吠え始め、 おびえる様になりました。
仕方ありません。とにかく治してみせる。
1ヶ月後、先生ももう大丈夫でしょうと 治療は最初の予測よりも早く終ってくれました。

菜々がストレスを感じる要因は 発病する1ヶ月前からたくさんありました。
家の外壁、瓦の塗り替えの為に足場を組んだり 毎日ものすごい音でした。
壁の塗りなおしには すべての窓がテープで止められ密封状態になります。
これが数日続き 家の中はシンナーの匂いが充満していました。
私達人間でも嫌になるのに 菜々にとっては地獄だったと思います。
極めつけはシロアリ駆除、昼間は実家に預けて 夜連れて帰りました。
その後に初めての生理、きっと疲れきっていたよね。
そんな事には全く気づかないひどい親です。

菜々は本当にアカラスだったのか?疑問の声もあります。
幸いにも早期発見で、一部の肌の炎症だけで済み 毛が抜ける事もありませんでした。
この病気は遺伝の可能性が高いとあったので 菜々のお母さん犬の事が気になり ブリーダーさんに連絡しました。
すぐにお返事を頂き お母さん犬はとても元気な事、アカラスにはどの犬もなっていない事を知りほっとしました。
と同時にアカラスについて詳しく説明して下さり 私の知識が間違っている所も教えて頂きました。
あらためて調べてみると 説明する人によって発病理由も治療方法も少しずつ違いがあり すべてを鵜呑みにするのは間違う時があると反省しました。
病気になった場合医師への信頼は大切、でも自分でも知識を持てば もっと先生へ質問も出来たと思います。

アカラスかそうでないかはどちらでも構わない。
菜々が元気でいてくれれば。